「日本では得られない刺激とスピード感があった」。そう語るのは、アメリカでの海外赴任を経験した30代の外資系コンサルタント。ハイレベルな現場で培ったビジネススキルと異文化理解は、彼のキャリアに何をもたらしたのか。実際に現地で生活し働いたリアルな声を紹介します。
海外で働くことになったきっかけは何ですか？
私がアメリカで働くことになったのは、外資系のコンサルティングファームに転職したことが直接のきっかけでした。入社時点で「将来的に海外拠点での勤務を希望する」と伝えていたのですが、思いのほか早くチャンスが巡ってきた形です。
もともと英語を使った業務には慣れていましたが、本場アメリカのクライアントと直接向き合う経験は、他では得られないと感じました。上司との面談で「現地での案件でリーダーを担ってみたい」と自ら希望を出したところ、シカゴの拠点での長期プロジェクトに参加することに。自ら動くことで道が開けた、という感覚が強く残っています。
現地の生活で最も苦労したことは何ですか？
生活面で最も苦労したのは、時間の使い方と自己管理の難しさです。アメリカでは「自分の時間をどう使うか」は完全に自己責任。特にコンサルティングのようなハードな業種では、仕事とプライベートの境界線を自分で引く力が必要でした。
また、一人暮らしの中でのトラブル対応にも苦労しました。水道の修理、家賃の交渉、役所関連の手続きなど、すべてを英語で自分でこなさなければならない環境は、日本での生活とはまったく違うものでした。
「誰かが助けてくれる」という前提がない社会に身を置いたことで、精神的にもタフになったと思います。最初の半年は本当に大変でしたが、少しずつ「自分一人でもやっていける」と思えるようになりました。
語学力はどの程度必要でしたか？赴任前にどんな準備をしましたか？
語学力については、ビジネスレベルの英語が必要不可欠です。特に私たちのようにクライアントと直接やり取りする立場では、単なる英語の「理解」ではなく、「説得」や「交渉」ができる力が求められます。
赴任前には、英語でのプレゼンテーションやロジカルスピーキングの研修を受けました。また、アメリカの文化やニュースにも日常的に触れるようにして、現地のビジネス常識やトピックにアンテナを張っておくことを意識しました。
ただ、完璧な英語よりも「自分の考えを筋道立てて主張できること」が何より大切だと感じました。赴任後は、言語以上に「信頼関係をどう築くか」が試される場面が多かったです。
現地の職場文化や働き方は、日本とどう違いましたか？
一言で言えば、「成果主義の徹底」と「フラットな関係性」が印象的でした。年齢や役職に関係なく、価値ある意見は歓迎される一方で、自分の主張に責任を持つことが求められます。
日本では、空気を読むことや同調圧力が働きやすい場面もありますが、アメリカの職場では「言わなければ伝わらない」「遠慮は美徳ではない」という価値観が根付いています。
また、仕事の進め方も非常に合理的でスピード重視です。定例会議でも「結論から話す」「余計な説明はしない」といった文化があり、最初は戸惑うこともありました。
しかし、この環境に身を置くことで、自分の働き方がよりシャープになり、意思決定のスピードも格段に上がりました。一つの提案に対して即決されることもあり、「結果を出すためにどう動くか」を常に考えるようになったことは、大きな成長につながりました。
現地での医療や教育の環境はどうでしたか？
私は独身での赴任だったため、教育には直接関わっていませんが、医療制度にはかなり驚かされました。アメリカの医療は基本的に高額で、保険に入っていなければ一回の診察が数万円になることも珍しくありません。
私の会社はしっかりした医療保険を提供してくれていましたが、それでも自己負担はゼロではなく、予約も取りづらいのが現実でした。日本のように気軽に医者にかかれる感覚は通用しません。
そのため、健康管理は自己責任が基本で、食事や運動に対する意識も自然と高まりました。現地の同僚も「医者にかからずに済むように生きる」というスタンスの人が多く、文化の違いを感じる場面でもありました。
帰任後、日本でのキャリアや待遇に影響はありましたか？
帰国後は、グローバル案件のリーダーや、海外クライアントとの交渉役を任されるようになりました。現地での実務経験は、社内でも高く評価されていると実感しています。
また、昇進にもプラスに働きました。外資系企業では特に、「海外経験＝即戦力」という評価がされやすく、帰国から1年以内にマネージャー職に昇格しました。
何よりも、自分に対する見方が変わったというのが一番大きいです。以前は「日本で評価される人材」を意識していましたが、今では「どこでも通用するプロフェッショナル」であることを目指せるようになりました。一度外に出ることで、視野が劇的に広がったと感じています。
まとめ
アメリカでの赴任は、仕事の仕方だけでなく、自分自身のあり方を見つめ直す機会になりました。異なる文化、スピード、価値観の中で仕事をすることは簡単ではありませんが、それだけのリターンが確実にある経験です。
もし「海外に行くか迷っている」なら、早いうちに挑戦することをおすすめします。環境が人を育てる――その言葉を、身をもって実感する2年間でした。
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